fc2ブログ

白隠禅師坐禅和讃 概説

『白隠禅師坐禅和讃(はくいんぜんじざぜんわさん)』は、その経名にあるとおり、江戸時代の臨済宗の僧・白隠慧鶴禅師が作られた和文のお経です。その中心に説かれているのは、坐禅に代表される「禅定(ぜんじょう)」と呼ばれる実践行です。禅定とは「無神経・無感覚にならず、外界の刺激を受けていながら、精神を統一し、雑念を抑え、静かに思慮すること」です。

布施をするにも、戒律を守るにも、称名(しょうみょう)を唱えるにも、全ては「心のあり方」が問題になります。心が落ち着いていればこそ「正しい判断」や「正しい行い」ができるのであり「何事にも徹する」ことができるのです。禅定は、そのための基本となります。

静かに坐って禅定を慮(おもんぱか)る「坐禅」は、インドに於いて古くから行われてきた一種の瞑想方法であります。精神統一のための修行として、手軽にできることもあり、現在では仏教圏以外の国でも坐禅は行われています。

私たちの日常は、誘惑・苦難・不安にあふれています。これらは、正しい判断を狂わす原因となります。これらに打ち克つことができたなら、どんなに安心できるでしょうか。『白隠禅師坐禅和讃』は、そのためのヒントを提示してくれています。

──「奇なる哉、奇なる哉、一切衆生悉く如来の智慧徳相を具有す。但、妄想執着を以ての故に証得せず。」
(きなるかな、きなるかな、いっさいしゅじょうことごとくにょらいのちえとくそうをぐゆうす。ただ、もうぞうしゅうじゃくをもってのゆえにしょうとくせず。)

( なんて素晴らしいことだろうか、世界中すべてのものには、真実の心=仏心が、もともと備わっているではないか。しかし、妄想や煩悩、欲や差別が邪魔をして、私たちは仏心に気付かずにいるのだ。)

お釈迦様は、坐禅によりおさとりを得ました。その瞬間、この言葉を連呼されたと伝えられています。同じように、坐禅和讃の第1句には「衆生本来、仏なり」とあります。お釈迦様も白隠禅師も、私たちが仏であると明言しています。私たちがさとれないのは「仏心」を信じないためであり、禅定力が弱いためであります。お釈迦様が超人ではなく、私たちも凡人ではない、ということを信じて、仏教の実践行につとめましょう。

■参考文献
『禅宗聖典講義』/伊藤 古鑑 著/臨済宗青年僧の会
『白隠禅師坐禅和讃講話』/山田 無文 著/春秋社
『白隠禅師坐禅和讃』/春見 文勝 著/神宮寺花園会


*原文と意訳を、表形式で閲覧できます。→ 『白隠禅師坐禅和讃』解説(旧ウェブサイト仕様)


since 2005/1/27 - last modified 2014/4/21

テーマ : 仏教・佛教
ジャンル : 学問・文化・芸術

白隠禅師坐禅和讃 #1

(題名)
『坐禅和讃』

(現代語解釈)
『坐禅をたたえる詩』『坐禅によって培われる禅定を賛嘆し、以って苦しみを除く和語のお経』



(原文1)
衆生本来仏なり。水と氷のごとくにて。水をはなれて氷なく。衆生の外に仏なし。

(しゅじょうほんらいほとけなり。みずとこおりのごとくにて。みずをはなれてこおりなく。しゅじょうのほかにほとけなし)



(意訳1)
私たちは、皆生まれながらに、仏さまと同じ心を持ち合わせています。それはあたかも、「水」と「氷」の関係のようです。
氷は、水が固まってできたものであり、もとは同一のものです。水蒸気や雲も、水が変化したものです。水、氷、蒸気は、それぞれ形が違いますが、全て同じものであります。一般に「さとり」と呼ばれ、何か超人的な能力と思われがちな心も、また、凡人と思っている私たちの心も、本当は同一の「仏心(ぶっしん)」なのです。その「仏心」は、遠く離れた天国にあるわけではなく、水と氷のように、私たち自身の肉体と、その心を離れて存在するものではありません。

since 2005/1/27 - last modified 2014/4/19


テーマ : 仏教・佛教
ジャンル : 学問・文化・芸術

白隠禅師坐禅和讃 #2

(原文2)
衆生近きを知らずして。遠く求むるはかなさよ。たとえば水の中に居て。渇を叫ぶがごとくなり。

(しゅじょうちかきをしらずして。とおくもとむるはかなさよ。たとえばみずのなかにいて。かつをさけぶがごとくなり)



(意訳2)
ところが私たちは、誰でも「仏心」を持っている、ということを信じないために、選ばれた聖人のみに「仏心」が宿っていて、凡人には、さとる資格がないものだ、と思っているのです。または、厳しい修行を行った末に、ようやく外部から「仏心」が降臨してくるものだ、と思っているのです。
それは例えて言うならば、水の中にいて、のどが渇いた、と叫んでいる(周りは全て仏心であるのに、仏心を信じず、得ようともしない)ようなものであります。

since 2005/1/27 - last modified 2005/3/17


テーマ : 仏教・佛教
ジャンル : 学問・文化・芸術

ブログ内検索
カテゴリー
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
Author

うぇぶちこういん

ちこういん

リンク
バナー
住職へメールを送る
メールアドレスは正確に書いて下さい。間違いがあると、返信ができません。

名前 or ハンドルネーム:
メールアドレス:
件名:
本文:

RSSフィード
訪問者数累計