予期せぬ出来事が起こると、心は「不安」を感じます。不安は、そのまま行動に現れることがあります。いま世の中はコロナウイルス禍で不安が溢れています。ストレスが溜まって、ついイライラ。仕事や人間関係の悩みで、自傷や自死が増えているとも言われています。こんな窮屈な生活を、昨年の今頃に想像できたでしょうか?
***
最近私の身の回りで、常と変わった現象が続いています。まず、テレビのチャンネルと音量を変えられなくなりました。次に、AVアンプの電源が勝手に入りました。それから、空気清浄機のランプ、空気がきれいな時の青いランプが点灯しなくなり、空気が汚れている時の赤いランプしか点灯しなくなりました。さらに、私がお経を読む机の上に置いてある時計が遅れ出しました。そして今日は、塔婆立ての部品が一つ壊れてポロッと落ちました。数日間にこれだけいろいろなことが起こると、ちょっと気になります。折しも今月から、本堂の屋根葺き替え工事が始まりました。もしや、何か「不吉な前兆」...?
***
話は変わって。
日本プロ野球・読売ジャイアンツ(巨人)の坂本勇人選手(31歳)が、去る11月8日の試合で「2000本安打」を達成しました。これは過去に52人しか達成していない偉大な記録です。坂本選手が所属していた光星学院高等学校(現・八戸学院光星高等学校)の野球部は、とても練習量が多くきつかったそうです。彼が3年生のある日のこと、心も体もへとへとになり「もうダメだ」と思ったことがありました。その時、金沢成奉監督(当時)から
『体は心で動くから、まず心を動かせ』
という言葉をかけられました。この言葉は彼の心に突き刺さりました。将来プロ入りしたら、この言葉を大切にして励もうと思ったそうです。(安倍昌彦氏のコラムを参照しました)
***
最近の不思議な現象について、このまま「なぜだろう?」と思っていては「不安」なので、「心」を動かし検証作業をしていきました。「テレビのチャンネルと音量」は、一度壁プラグからコンセントを抜き、数分後挿し直すことで直りました。「AVアンプの勝手に電源オン」は、原因がつかめず「誤作動」と判断しました。「空気清浄機のランプ」は、違うコンセントに挿してみても改善せず「故障」と断定。「時計」は単に「電池切れ」でした。「塔婆立ての部品」は、何度か体をぶつけた記憶があるので、すでにダメージを受けていて、そこに瓦工事による建物の振動と合わせて、私が歩いた床の振動で落ちたのだと思います。接続部分を見たら、ダボがちぎれていました。「嫌なことが続くな」と思っているだけでは、いつまでも不安なままでした。「何か原因があるだろう」と考えて、一つずつ実際に検証したことで、私の不安は一掃されました。
***
いま行っている屋根の葺き替え工事は、職人さんにとってかなり危険な作業です。大勢の職人さんに、事故がないように目を配るのは大変だ、と親方はおっしゃいました。職人さんたちが安心して仕事が出来ることはとても大切です。親方と職人との信頼関係、みんなの心と体が一つになることが良い仕事につながっていくのだと思われます。
「不安」の反対は「安心」。そのどちらも作り出すのは「心(こころ)」。あなたの「心」は、「不安」を作るが「安心」も作ります。不安になった時、
『体は心で動くから、まず心を動かせ』
という言葉を、ちょっと思い出してみてくださいね。
以下余談です。
一昨年、本堂の耐震補強と天井の貼り替え工事をいたしました。工事に入る前日、本堂の人天蓋(じんてんがい・外陣の天井から下がっている大きな飾り)の瓔珞(ようらく・玉)の紐が切れて、畳の上に瓔珞が散らばっていました。最初にその光景を見た時、少し動揺しました。しかしすぐに、
・・・注意して工事をしなさいよ・・・
と、御本尊様が教えてくださったのだと直感しました。「不吉な前兆」ではなく、御本尊様がしっかり見守ってくださっていると、確信いたしました。大工の棟梁にその話をしたところ、棟梁も何度か似たような経験をされているとおっしゃいました。私が不安なまま工事を見ていると、職人さんにも私の不安が乗り移るような気がしました。私に過度な不安がなければ、職人さんも安心して工事をしてくれる、そんな気がしました。この事件は、私にそんな「気付き」を与えてくれました。
人天蓋は修理に出しました。瓔珞の紐の付替えだけでなく、全体の洗浄もいたしました。そして、工事後きれいになった天井に、見違えるように光輝く人天蓋が下がりました。ホコリでくすんだ人天蓋がそのまま戻されるはずが、思いがけず瓔珞の紐が切れたせいで、天井も人天蓋も一緒にリニューアルしたのでした。
- 関連記事
-