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前山寺

前山寺の三重塔


信州上田は古刹の多い地域です。今日は真言宗智山派・前山寺(ぜんさんじ)のご紹介。

獨股山(とっこさん)前山寺は、独鈷山の麓にあります。独鈷(とっこ)とは、弘法大師の像が、よく手にしている法具ですが、本来は武器です。形を見ると、かなり危険な武器であることが容易に想像できます。それが密教の法具に使われるようになりました。
弘法大師が独鈷をもって加持祈祷をしたところ、山から水が沸き出したので、以来「独鈷山」と呼ぶようになったのだとか。

この寺には「未完成の完成の塔」と呼ばれる、重要文化財の三重塔があります。よく見ると、窓や欄干などがありません。つまり、建造途中の塔なのだそうです。しかし、中途半端なのに美しい。「未完成の完成の塔」と呼ばれる所以です。

ところで、拙寺・智光院の本堂は、昭和34年に完成しましたが、新築ではなく、真言宗豊山派のお寺に建っていた本堂を買い取ったものです。一度ばらしてから、使える部材を当地へ運び、ふたたび組み直した中古の本堂なのです。よく見ると、木材を継ぎ足したり、妙な隙間が空いていたりします。そして先住職は、この本堂を「未完の本堂」にしたのです。外陣前面の欄間に貼らなければならない障子紙を、わざと貼らなかったのです。
私が子供の頃の本堂=昭和40~50年代の本堂は、隙間だらけのガラス戸や、正面から外れた玄関、予算がまわらなかったのであろう安普請の天井など、随所に当時の苦労が偲ばれました。内陣の須弥壇も、禅宗様式に変更せず、真言宗の造りのままです。そして先住職は、それらに徐々に手を入れていき、最終完成形になったところで、欄間の障子紙を貼るつもりだったのでした。

残念ながら先住職は、その手で障子紙を貼ることなく亡くなりました。「自分が出来なかった時には、次の住職が完成させて欲しい」と、生前、周囲に話していたそうです。最後に障子紙を貼る仕事は、私に預けられているのです。

前山寺の三重塔は「未完成の完成」のままで、未来永劫完成形を見ないでしょうが、智光院の本堂は「未完の本堂」のままでなく、何とか完成させたいと思っています。
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