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ウサギの決意

森の中に修行に励むウサギが住んでいました。ある日ウサギが月を見ていると、明日が「精進日(しょうじんび)」であることに気付きました。精進日とは、精進をする日、精進とは善いことを行うのに勇敢であること、特に他人に親切にすることです。

ウサギは
「明日は精進日なので、行いを慎み、人に施しをしよう。誰かおなかのすいた人が訪ねてきたら、ご飯を食べさせてあげよう」
と考えました。

翌日になり、ウサギは家の中で寝転がって思いました。
「誰かおなかのすいた人が訪ねてきたら、ご飯を食べさせてあげようと思ったけれど、私の家には草しかなく、他人が食べられるような物がないな」

ウサギは考えました。
「よし、それなら私の肉を食べてもらおう」

ウサギのこの決意を、天に住むインドラ神が知りました。
「なかなか感心なことである。ひとつ私がウサギの決意を試してみよう」

インドラ神は修行僧の姿に変え、ウサギの家にやって来ました。
「ウサギさん、私は今日、精進日の修行をしようと思っていますが、おなかがへっていて修行ができません。何か食べ物を恵んでいただけませんか?」

ウサギは喜んで答えました。
「お坊さん、よくぞ私の家に来てくださいました。私も今日、精進日の修行をしようと思っています。おなかのすいた人が訪ねてきたら、ご飯を食べさせてあげようと考えました。ですが、私の家には食べ物がありません。そこで、私は自分の肉を食べてもらおうと思います。お坊さんはこれから火を起こしてください。火がついたら私はそこに飛び込みます。私がちょうど焼けたら、取り出して食べてください」

修行僧は神通力を使ってすぐに火を起こし、ウサギに火の用意ができたことを伝えました。ウサギは自分の身体を震わせてノミを払い落とし、そして喜び勇んで火に飛び込みました。

ところがどうしたことか、火はまったく熱くなく、ウサギの身体を焼くことができません。ウサギは驚いて言いました。
「お坊さん、この火はまったく熱くなく、私を焼くことができませんので、私の身体を食べてもらえません」

修行僧は言いました。
「ウサギよ、私はインドラ神だ。ウサギの決意を試すためにここに来たのだ」

ウサギは
「インドラ神であっても、普通の人であっても、私の決意は変わることはありません」
と答えました。

ウサギのその言葉を聞き、インドラ神は言いました。
「ウサギの立派な行いが、後の世の人にも伝わるように記しを残そう」

そうしてインドラ神は、月の表面にウサギの姿を書いたのでした。

ーーー

この話のオリジナルは「ジャータカ」に載っています。オリジナルでは、カワウソ、ヤマイヌ、サルが友達として登場します。大筋を崩さない程度に脚色して書きました。

この話は、ウサギの行う布施行が主題ですが、善行をすることに努力する姿は、まさに精進の実践を示していると言えるでしょう。

参考書籍 「ジャータカ物語 インドの古いおはなし」 辻直四郎/渡辺照宏 訳 岩波少年文庫 139


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